もし自分のリーダーバンドのライブのときに、自分がインフルエンザになったら、という話。
誰もが悩む、風邪で仕事を休めるかっていうとっても微妙な話。
メンバーは代打を立てたり、アレンジを変えて演奏をやることができるし、
それがいいアドリブのきっかけになったりもする。
でも、リーダーバンドのリーダーの代打は誰にも頼めない。
だから、出演を決めるのは特に自分のバンドはいつも怖いし、
怖いからこそ気をつけて準備をしている。
風邪が流行っているとニュースで見たら、
移動に電車は使わないようにしたりして
今までは、そういうことが一度もなくてラッキーだった。
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ミュージシャンは決まったブッキング(=出演の約束)を決してひっくり返さないのが
プロ根性と考えられているけれど、絶対やらないといけない演奏っていうのは
実は音楽の場合はそんなにないと思う。
インフルエンザとかだったらお客さまに移してしまうかもしれない迷惑を顧みず
それでもぜったいやらないといけない音楽っていうのは、ないと思うんだ。
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そんなときに思い出すのは、ジョー山中さんのこと。
最期まで歌うことにこだわって肺がんに外科手術をしないで戦ったそうだ。
ジョーさんは年末になると、葉山の孤児院の生徒たちのために
クリスマスプレゼントで演奏するっていうのを長年のライフワークにしていた。
知り合いのタレントやアーティストの人が不意に連れて行かれては
一緒に演奏するっていう、業界周りでも年末の風物詩として伝説になってたらしい。
ジョーさんの最後の年末になってしまった2010年は
その大切なクリスマスパーティーに病気で出られなかったんだ。
生徒たちとの約束を守ろうと、長年ずっと大切にしてきた活動で、
きっと無念に違いなかったと思う。
そういうライフワークで、長年続けて、結果的にはラストになってしまったその現場を
ジョーさんは、僕に託してくれた。
代打を頼んでくれて、直接よろしくと言ってくれたんだ。
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いま考えてみると、あのとき僕に代打を頼んだのは、
ジョーさんの具合が悪かったからだけではなくて、
生徒に風邪を移したりしたくないからという理由もあったんじゃないかと思う。
その後の2011年の3月に、一緒に渋谷の募金活動に立ったときの様子を見ていて、
自分の具合が悪いだけなら、ジョーさんなら気合いで現場に出るってわかったから。
本当の理由はもう本人に聞けないし分からないけど、僕は見習いたいと思う。
お客さまのためのベストを尽くすっていう姿勢。
実際、本番前にジョーさんに会って、想いを短時間の会話でびしっと伝えてくれたし、
代打で向かった演奏は、すごく良くできたんだ。
お客さんも喜んでくれた。ジョーさんのクリスマスプレゼントの演奏だったから。
僕の演奏だったけど、「僕の」演奏じゃない。
代打に出してくれたジョーさんの選択がベストだと思った。
みんなに想いが伝わったんだから。
あとで重大な結果になることがあっても、
安易に出てはいけない本番も、人生にはあるってわかった。